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お小遣いと金銭教育 [子どもの教育]

お小遣いについて夫と話をしていたところ、お小遣いが金銭教育になるというエビデンスはあるのかと聞かれたので調べてみました。

先日聞いてきた出口治明先生の講演会で、事実は縦(歴史)と横(他国ではどうか)で検証するという話があったので、それに習って考えてみます。

1.金銭教育の歴史と目的

『小中学校における「金銭教育」の現状と課題』という研究論文(著者 藤田,優子[他] 2005消費者金融サービス研究学会年報. (6)掲載)に記載がありました。

現代社会は少子化によって幼児期から多額のお金を手にする子どもが増え(両親と両祖父母から子どもたちにお金が落ちるシックスポケット)、消費社会の進行が子どもをターゲットとしたマーケットを増やし(アパレル、化粧品、ゲーム)、情報化社会の進行によって低年齢層にも簡単に情報にアクセスできるようになってきている。
子どもがお金を持ち、自由にマーケット、情報にアクセスできるようになったことから、本人の意思に反してトラブルに巻き込まれたり、お金にまつわる事件の被害者および加害者になる事例も増えてきている。
一方で家庭での子育て力は低下。家庭で健全な金銭感覚が育てられにくい現状を受けて、お金やモノを大切に扱い、お金の魔力に振り回されず管理できる力を育てる教育が必要と認識されるようになってきた。これが金銭教育。

お金にまつわる教育と広義に捉えると税金や投資といった分野が入ってくるのですが、そもそも子どもたちがお金に振り回されずお金を管理して生きることができるようになる為に生まれた概念であるという歴史的経緯を考えると、小学生、中学生のうちに必要とされる金銭教育は「子どもたちがお金に振り回されずうまくコントロールして生きるために、お金の使い方を体験によって学ばせる教育」ということになるかと思います。

http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10355734_po_ART0009640636.pdf?contentNo=1&alternativeNo=


2.世界の中での金銭教育

日経DUALの記事に「おカネの天才の育て方(ベス コブリナー著)」を取り上げているものがありました。この本に書かれている内容紹介の中に各国での研究結果の記載がありました。

:
カナダのある研究(※1)によると、お小遣いをもらっている子供はもらっていない子供よりクレジットカードとおカネについてよく理解していた。だがイギリスの研究(※2)では、お小遣いをもらっている子供は、お手伝いやアルバイトでおカネを稼いでいる子供に比べて貯金が下手だった。
※1 Rona Abramovitch, Jonathan L. Freedman, and Patricia Pliner, “Children and Moけney: Getting an Allowance, Credit vs. Cash, and Knowledge of Pricing,” Journal of Economic Pricing, vol. 12, no. 1, March 1991, pp. 27-45.
※2 Sarah Brown and Karl Taylor, “Early Influences on Saving Behavior: Analysis of British Panel Data,” Journal of Banking and Finance, vol. 62, January 2016, pp. 1-14.
:
https://dual.nikkei.co.jp/atcl/column/17/021400055/021400002/?ST=mobile

カナダの研究は知識理解について、イギリスの研究は貯金についてで、これだけでなにかを結論づけるのは難しいですが、他に研究結果は見つけられませんでした。

そして、この本には「お小遣いをきっかけにおカネについて子供と話すことが、お小遣いそのものよりも大切だということは、さまざまな研究でも明らかになっている。」とも書かれていました。
さまざまな研究がどんな研究なのかがわからないですが、この本はアメリカの本なので、アメリカではお金と教育について、日本よりも研究がなされているのかもしれません。

しかし、わたしが調べたかったお小遣いの渡し方とその教育効果についての因果関係がわかる研究結果はないようです。


3.定額制お小遣いと報酬制の比較

最後に定額制のお小遣いと報酬制のどちらが子どものためによいのか、と言う議論について。

上記の本の筆者は、基本的にルールは各家庭で決めればよいが、お手伝いとお小遣いは切り離して考えるべきと書かれています。

確かに「助けてくれてありがとう」の気持ちは、報酬にすることで、「またやろう、頑張ろう」という意欲を削ぐという研究結果は出ています。
心理学ではアンダーマイニング効果というそうです。

報酬を与えることが意欲をそぐ
https://swingroot.com/undermining-effect/

これはお小遣いによってお金の使い方が上手になるかどうかとは違う観点の話ですが、お金の渡し方を間違えると、別のマイナス要素が出てくる(上記の場合、お手伝い、家事分担によって養われる奉仕の心等の育成に支障が出るということ)ということだと思います。

結局、お小遣いによる金銭教育は、子どもにどんな大人になってほしいかという大人の価値観によって、いかようにも運用できるということになりそうです。


子どもにお金に困ったりお金に振り回されることなく幸せな人生を送ってもらうための教育の手段として、段階的に定額のお小遣いを渡すことは、お金は稼ぐものという意識の低下に繋がるわけでもないし、それだけで貯金が上手になるというものでもない。

ただ、何のために渡すお金か、というところは重要で、親は子どもにお小遣いを渡すときには将来経済的にも自立して生きるための訓練として渡すということを、しっかり伝えておく必要はあると思います。

そして、どんな生き方が幸せなのか、親の価値観を押し付けるのではなく子どもたちが自ら考え掴み取っていけるように、親も考え続けることを放棄してはいけないなと思うのでした。

お金に縛られない生き方
https://www.houdoukyoku.jp/posts/15329

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